by chance? or by design?

今週のby chance? or by design?は、“有機物のスープ”について。

先週まででアミノ酸が偶然に生成されるかということについて考えましたが、今週はそれが偶然に大気中に生成されたとして、そのアミノ酸が降下し大洋の中で有機物のスープを形成するというのは、どれほど起こりうることでしょうか?

それはあり得ないようです。

大気中の単純な化合物を分解したとされるその同じエネルギーが、そこに生成した複雑なアミノ酸をより短時間に分解するからです。

そもそもスタンレー・ミラーが自分の得たアミノ酸を保存できたのはそれを飛ぶ火花の範囲から取り除いたからで、そこに残しておいたなら火花がそれらを分解してしまいます。

それでも数種類のアミノ酸が偶然に生成され、火花のようなエネルギーから保護され、何らかの方法で大洋に達し、紫外線の照射から保護されたと仮定したらどうなるでしょうか。

科学者のヒッチングによると、「水面下にはそれ以上の化学反応を促進するエネルギーは存在しない。いずれにせよ、水はより複雑な分子への成長を阻む」

ですから、ひとたび水の中に入ったアミノ酸は、それがさらに大きな分子を形成し、生命の形成に役立つタンパク質となる方向へと進化して行く為には、その水の中から出なければならず、他方、ひとたび水の中から出ると、今度は破壊的な紫外線の中に再び入ることになります。

「生命進化における、この最初の、比較的容易な段階[アミノ酸を得ること]を通過することさえ、その理論上の可能性は極めて望み難い」とヒッチングは述べています。

科学者リチャード・ディカーソンは「原始大洋という、水の多い環境の中で重合(小さな分子を結合させてより大きな分子を作ること)がいかに進行し得たかは理解しがたい。水の存在は、重合より解重合(大きな分子をより小さな分子へに分解すること)の方向に作用するからである」。と言っています。

しかも「自然分解は自然合成よりずっと起こりやすく、それ故にずっと速く進行する」と生化学者のジョージ・ウォールドものべましたが、それは私たちも日常の感覚から理解できます。

次回はアミノ酸の“右手型” “左手型” について。